ETFによるインデックス投資は、非常に楽で安全かつ効果的な投資手段です。値動きは緩やかなものに留まりますが、分散が効いているため、地雷銘柄によって資産が大きく棄損してしまうこともそうありません。
また、ETFの対象とする指数算出会社によって、忙しい投資家でも「それなりの銘柄群」に効率的に投資することが可能です。しかし、そうしたETFにも問題が。それはETFそのものを選び間違えてしまうリスク。
ETFが普及して色々な会社が設定して上場していますが、あまりに数が多くてどのETFが良いか分からない。しかも、米国上場のものだと情報が少ない。特に私が好きな「高配当利回り」をテーマにしたETFは様々な指数を参照しています。
ETFは投資信託等と比較するとコストも圧倒的に安く素晴らしい投資手段ですが、それぞれのETFが参照するベンチマークによってパフォーマンスも千差万別。選び間違えてしまうと、資産が思ったように増えないことも。
ETFの選び方には色々な基準がありますが、まずは純資産の金額順が一番シンプルなバロメーターになるかと思います。
受託資産の多寡はETFのパフォーマンスに完全に比例する訳ではありませんが、受託金額の多いということはそれだけ多くの投資家のお眼鏡に適ったということですから、外れを引く可能性は低いと言えます。勿論絶対ではありませんが。
基本的なETFは下記の記事でまとめてみましたが、改めて米国上場の高配当株ETFの純資産額で調べてみました。
Contents
- 1 純資産金額ランキング(2017/5月末基準)
- 2 1位 VIG:Vanguard Dividend Appreciation ETF
- 3 2位 VYM:Vanguard High Dividend Yield ETF
- 4 3位 DVY:iShares Select Dividend ETF
- 5 4位 SDY:SPDR S&P Dividend ETF
- 6 5位 HDV:iShares Core High Dividend ETF
- 7 6位 SCHD:Schwab US Dividend Equity ETF
- 8 7位 FVD:First Trust Value Line Dividend Index Fund
- 9 8位 NOBL:S&P 500 DIVIDEND ARISTOCRATS ETF
- 10 9位 SPHD:PowerShares S&P 500 High Dividend Low Volatility Portfolio ETF
- 11 10位 DON:WisdomTree MidCap Dividend Fund
- 12 まとめ
純資産金額ランキング(2017/5月末基準)
順位 | シンボル | ETF Name | 資産残高 | 配当利回り |
1 | VIG | Vanguard Dividend Appreciation ETF | 27,049億円 | 1.98% |
2 | VYM | Vanguard High Dividend Yield ETF | 20,031億円 | 2.94% |
3 | DVY | iShares Select Dividend ETF | 18,955億円 | 3.01% |
4 | SDY | SPDR S&P Dividend ETF | 17,154億円 | 2.49% |
5 | HDV | iShares Core High Dividend ETF | 7,093億円 | 3.26% |
6 | SCHD | Schwab US Dividend Equity ETF | 6,072億円 | 2.83% |
7 | FVD | First Trust Value Line Dividend Index Fund | 3,974億円 | 2.02% |
8 | NOBL | S&P 500 DIVIDEND ARISTOCRATS ETF | 3,341億円 | 1.98% |
9 | SPHD | PowerShares S&P 500 High Dividend Low Volatility Portfolio ETF | 3,337億円 | 3.81% |
10 | DON | WisdomTree MidCap Dividend Fund | 3,191億円 | 2.65% |
※円換算は1ドル110円で計算
高配当株運用をテーマとしたETFの中で純資産1兆円を超えるETFは4本あり、バンガードやブラックロックのiShares、ステートストリートのSPDRなど名だたるETFプロバイダーのメジャーETFが上位に位置しています。
意外だったのは、1位のVanguard Dividend Appreciation ETF。このETFは単純に高配当な株にフォーカスしたETFではなく、増配可能性の高い銘柄にフォーカスしたETFです。そのため、2兆7千億円もの純資産金額を誇る人気ETFですが、利回りは2%割れと必ずしも配当利回りが高い訳ではないのが興味深い。
次にそれぞれのETFについて簡単に見ていきます。
1位 VIG:Vanguard Dividend Appreciation ETF
シンボル | VIG |
運用会社 | バンガード |
特徴 | 増配可能性の高い米国株式で運用 |
配当利回り | 1.98% |
3年累積リターン | 29.6% |
1位はバンガードのVanguard Dividend Appreciation ETF。2位以下が殆ど利回りの高い株を組み入れたETFですが、このVIGは10年以上連続して増配している銘柄を組み入れたETFです。
購入時点での配当利回りは低いですが、中長期で保有して増配によるインカムリターンの積み増しを期待したい人向けのETFですね。
2位 VYM:Vanguard High Dividend Yield ETF
シンボル | VYM |
運用会社 | バンガード |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 2.94% |
3年累積リターン | 31.5% |
次点もバンガードのVanguard High Dividend Yield ETF。こちらはバンガードの高配当株式ETFのスタンダードライン。
上位20位の中でも敢えてこのETFに投資するメリットとしては、やはりバンガードETFの特徴である低コストです。経費率はわずか0.08%と安価なため、長期保有を前提とした投資家にとってはありがたい1本。
高配当米株投資家がブログなどで紹介しているのもよく見ます。
シンボル | DVY |
運用会社 | ブラックロック |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 3.01% |
3年累積リターン | 31.5% |
3位はブラックロックの高配当ETFであるiShares Select Dividend ETF。2003年設定と古くからある高配当株ETFです。
バンガードと比較すると経費率0.39%と比較的コストの高いiSharesですが、配当利回り、3年・5年の累積リターンの項目は20個のETFの中でも上位に位置しており、インカム・キャピタルリターン共に狙えるバランスの良いETFです。
4位 SDY:SPDR S&P Dividend ETF
シンボル | SDY |
運用会社 | ステートストリート |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 2.49% |
3年累積リターン | 31.2% |
4位はSPDRブランドでお馴染みのステートストリートが運用するiShares Select Dividend ETF。
人気のSPDRブランドですが、コストが0.35%とバンガードなどの比較すると高くつくため、最近はVYMに押され気味。最近は配当利回りも低く、累積リターンもそこそこなため、あまり良い所がない状況です。
シンボル | HDV |
運用会社 | ブラックロック |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 3.26% |
3年累積リターン | 27.0% |
5位はブラックロックのETFの中でもコストを抑えたCoreシリーズの高配当ETFであるiShares Core High Dividend ETFです。
配当利回りもそこそこ高く、経費率は0.08%とバンガードにも十分対抗できる水準なHDVですが、ベータが低いためここ5年の上昇相場でのキャピタルリターンは15個のETFの中でも低位に位置します。
下落局面での安定感は期待できそうですが、中長期でみたキャピタルリターンはそこまで高くならない可能性に注意です。
6位 SCHD:Schwab US Dividend Equity ETF
シンボル | SCHD |
運用会社 | チャールズ・シュワブ |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 2.83% |
3年累積リターン | 31.2% |
6位は米オンライン証券大手のチャールズ・シュワブが提供する高配当株式ETFであるSchwab US Dividend Equity ETF。
このETFもチャールズ・シュワブの強みである”低コスト”を体現しており、経費率は0.07%とバンガードを下回る設定。キャピタルリターン・インカムリターン共に平均的水準にあり、安定していることもこのETFの強みの一つと言えます。
7位 FVD:First Trust Value Line Dividend Index Fund
シンボル | FVD |
運用会社 | ファーストトラストアドバイザーズ |
特徴 | 配当利回りの高い米国株式で運用 |
配当利回り | 2.02% |
3年累積リターン | 40.8% |
7位はファーストトラストアドバイザーズが運用するETFであるFirst Trust Value Line Dividend Index Fund。このETFは、米国の投資関連情報誌会社であるバリューラインのValue Line® Safety™ Ranking Systemにより高い評価を得た銘柄で構成される指数をトラックする変わったETFです。
経費率は0.70%と高く、配当利回りも2.02%とかなり低い水準にありますが、キャピタルリターンでは15銘柄中2位の実績となっています。
値上がり益は狙えますが、そもそも高配当株ETFを購入する人はやはり利回りを重視すると思われますので、経費率の高さを考慮するとあまり積極的に買うべきETFではないかもしれません。
8位 NOBL:S&P 500 DIVIDEND ARISTOCRATS ETF
シンボル | NOBL |
運用会社 | プロシェアーズ |
特徴 | 25年以上連続して増配している米国株式で運用 |
配当利回り | 1.98% |
3年累積リターン | 34.8% |
8位はプロシェアーズが運用する高配当株ETFのS&P 500 DIVIDEND ARISTOCRATS ETFです。
このETFは”DIVIDEND ARISTOCRATS”が示すように25年以上増配する株式である”配当貴族”で構成される指数を対象としています。但し、このETFも冒頭のバンガードのVIG同様増配可能性が高いだけで、購入時点の配当利回り自体は高くはありません。
気長に配当が増えるのを待てる投資家には良いのかもしれませんが、組入れ銘柄数は50前後と少ないため、VIGと比べると地雷を踏む可能性も相対的に高いです。
シンボル | SPHD |
運用会社 | インベスコ |
特徴 | 高配当・低ボラの米国株式で運用 |
配当利回り | 3.81% |
3年累積リターン | 46.3% |
9位はインベスコの運用するPowerSharesシリーズの1つ PowerShares S&P 500 High Dividend Low Volatility Portfolio ETFです。S&P500銘柄のうち、配当利回りが高くボラティリティの低い50銘柄で運用されます。
配当利回り・3年キャピタルリターンは共にこのランキングのETFの中で堂々の1位。このETFは設定が2012年と浅いものの、既に3,000億円以上集めていることからも人気の高さが伺えます。
少なくともここ3年~5年の実績では、間違いなくおすすめできる1本。
10位 DON:WisdomTree MidCap Dividend Fund
シンボル | DON |
運用会社 | ウィズダムツリー |
特徴 | 高配当の中型米国株式で運用 |
配当利回り | 2.65% |
3年累積リターン | 33.1% |
10位は最近勢いのあるウィズダムツリーの運用するWisdomTree MidCap Dividend Fundです。比較的大型株の多い高配当株運用の中でも中型株にティルトしたETFです。
配当利回りは2%台半ばとそこまで高くはありませんが、中型株なのもありベータは0.9と高め。上位10個のETFのなかでは5年キャピタルリターンは1位ということもあり、値上がり益も狙いたい人向けでしょうか。
まとめ
足下のデータを基に高配当ETFのうち純資産額の大きな銘柄を集めてみました。ここに挙げられた銘柄はかなり大きな金額のETFであるため、途中償還リスクや流動性リスクは懸念する必要はないでしょう。
上位は日本の投資家にも人気のETFが並びましたが、例えば9位のSPHDはまだトラックレコードが短いのが気になりますが、現時点では結構良い成績を出していますね。
今度私のポートフォリオにも組み入れてみようと思います。