米国株式の代表的指数であるS&P500は、S&Pダウ・ジョ-ンズ・インデックスが算出している米国の有力銘柄500社で構成される指数だ。
インデックス投資がメインの私にとって、個別銘柄の値上がり・値下がりはあまり関係ないが、個別銘柄の動きは今後の相場を知るのに非常に参考になる情報の1つだ。
日本にいると普段のニュースフローで見かけるのは、AmazonやGoogle等のテック銘柄が殆どだが、実際のトップパフォーマーの中には、こうしたテック関連以外の銘柄も多い。
そこで改めて昨年のS&P500構成銘柄のうち、年間値上がり率上位10社について確認してみた。
Contents
Align Technology(ALGN)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | 3Dデジタルスキャナー・歯科矯正器具の製造 |
値上がり率 | 132% |
昨年のS&P500構成企業のうち、最もパフォーマンスが良かったのがこのアライン・テクノロジーだ。同社は矯正器具や口腔内スキャナーの製造会社であるが、近年の多くの歯科医院で使用されており、売り上げ増は非常に好調らしく足元5年で売り上げは倍増した模様。
米国では日本以上に不正咬合等は恥ずかしいことという意識が強いから、こういった業界の伸びも堅調なのだろう。
何も知らない状態だと値上がり率1位はテック関連を挙げてしまいそうだが、案外買われているのはメーカーであった。
NRG Energy(NRG)
項目 | 概要 |
上場市場 | NYSE |
主要事業 | 発電・電力小売り |
値上がり率 | 124% |
トランプ大統領が石炭業界の優遇や、パリ協定の離脱等を掲げる中、市場から高く評価されたエネルギー会社は皮肉にも太陽光発電等いわゆるグリーン電力を手がけるNRGエナジーが124%で上昇率2位となった。
同社は旧Houston Lightning & Powerから2003年にテキサス州のエネルギー規制緩和をきっかけにスピンオフされた企業の1つ。以降は太陽光発電会社や電力小売り会社等を積極的に買収し、子会社を通じてグリーンエネルギー関連事業を手広く手掛けている。
First Solar(FSLR)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | 太陽光発電パネル製造・運用・保守 |
値上がり率 | 114% |
3位のファーストソーラーも2位のNRGエナジー同様に太陽光発電モジュール(ソーラーパネル)の製造を行う企業で、グリーンエネルギー関連企業が続く結果となった。年間の株価上昇率は114%。
なお、近年ソーラーパネルの製造・販売は中国企業の安価な製品が席巻しており、米企業であるFSLRもシェアを落としている。ただし、同社は製造以降の調達・設置・運用・保守等を積極的に手がけており、新興国の安価な製品の流入による競争をうまく回避している。
Vertex Pharmaceuticals(VRTX)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | 医薬品製造 |
値上がり率 | 104% |
4位は主に低分子薬品の開発・製造を手掛ける医薬品製造のバーテックスファーマシューティカルズで、上昇率は104%となった。なお、低分子薬品とは、通常の薬品と比べ薬品の構成分子量が少なく、体内に吸収されやすい薬品のこと。
同社の主力医薬品はC型肝炎治療薬のIncivek(テレプレビル)だが、現在は白人の遺伝性疾患として多い「嚢胞性線維症」の治療薬の開発に力を入れている。2017年は開発薬品の良好な治験結果を背景に株価が大きく上昇。
Micron(MU)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | 半導体製造 |
値上がり率 | 101% |
5位のマイクロンは半導体製造を手がける米企業。近年のデータセンター、クラウドネットワーク、モバイルネットワークにおけるDRAMやNAND等の半導体需要の増加を受けて、大きく業績が伸長。年間の株価上昇率は101%となった。
半導体は”シリコンサイクル”という言葉が存在するように4・5年の周期で需要不足・供給過剰を繰り返していることもあり、業績の伸長度合と比べると、これでも株価はまだまだ慎重さを残しているようだ。
Wynn Resorts(WYNN)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | 統合型リゾートの開発・運営 |
値上がり率 | 94% |
第6位に位置するのは、リゾート施設の開発・運営を行うウィン・リゾーツで、年間の上昇率は94%。主に米ラスベカスや中国のマカオで事業の運営を行っている。
習政権によるギャンブル等の取り締まり強化で一時は業績の低迷が見られたものの、足元の復調は著しい。また、今後のプロジェクトとして、ボストン・マサチューセッツや、日本への参入等も検討しており、それらを期待した買いも株価を押し上げている。
Boeing(BA)
項目 | 概要 |
上場市場 | NYSE |
主要事業 | 航空機製造 |
値上がり率 | 89% |
7位は航空機の開発・製造でお馴染みのボーイング。上昇率は89%。
業績の伸びはそこそこ程度であったが、2017年当時においては配当利回りの高さから配当狙いの投資家による買いが株価を押し上げた。
航空機需要の高まりによる安定した事業収益を背景に、2014年以降の増配率は2014年:24%、2015年:20%、2016年:30%と2桁の増配率が続いたことも上昇を後押し。
PayPal Holdings(PYPL)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | オンライン決済サービス |
値上がり率 | 87% |
オンライン決済サービス大手のペイパルが第8位で、年間の株価上昇率は87%。
電子決済の手法が多様化する中、小売り業者が顧客の支払い方法に幅を持たせることは、近年の販売戦略上重要な要素の1つとなっており、ペイパルはその波に乗っている。
主に個人事業者向けの電子決済サービスである「ペイパルワンタッチ」では、事前にユーザーが登録しておけば、ログイン・パスワードの入力等不要でワンタッチで決済できるが、こうしたサービスがモバイル経由の決済をうまく取り込んでおり、業績の伸びも堅調。
D.R Horton(DHI)
項目 | 概要 |
上場市場 | NYSE |
主要事業 | 住宅の建築・販売 |
値上がり率 | 86% |
住宅の建築・販売を行うDRホートンが第9位。株価の年間上昇率は86%。
長期にわたる堅調な雇用情勢と低金利によって米国の住宅市場の伸びも底堅く推移しており、住宅販売手がけるDRホートンの株価も高い上昇率となった。
しかし、これは年末までの話で、足元ではインフレ期待の高まりから金利が上昇しており、不動産関連銘柄はことごとく軟調な展開。DRホートンも2018年初は相当売り込まれている。
Nvidia(NVDA)
項目 | 概要 |
上場市場 | NASDAQ |
主要事業 | GPUの開発・販売 |
値上がり率 | 83% |
半導体関連メーカーで最近よく注目されているのがこのエヌビディアだろう。年間の上昇率は83%で第10位。ソフトバンクが出資したことでも話題となった。
エヌビディアのグラフィック・チップはAIや自動運転等今後の期待される産業において、必須の製品となっており、大きな期待が寄せられている。2016年はS&P500の上昇率1位であったが、2017年も凄まじい上昇となった。
上位パフォーマーの傾向
以上が昨年の上位10銘柄だが、ペイパルやエヌビディアといった生粋のNASDAQ上場のテクノロジー関連銘柄あれば、ボーイングやDR Horton等の昔ながらの企業も上位に位置しており、必ずしもテック全盛という訳ではない。
インデックス投資を行うと、こういう個別銘柄の動きに鈍くなりがちだが、時折このように個別株の動きを追ってみると中々面白い。
参考記事:
- https://www.fool.com/investing/2017/12/28/the-25-top-performing-sp-500-stocks-of-2017.aspx
- https://investorplace.com/2017/12/10-top-sp-500-stocks-a-gallery-of-winners/