私は結構海外旅行に行くが、しばしば悩むのが現地での支払事情だ。海外旅行に慣れていなかったり、忙しい人はしばしば空港の両替店舗で交換しががちだ。
最近では、為替手数料を削減する手段としてマネパカード等の外貨プリペイドカードを使った方法も普及してきたが、外貨プリペイドカードには以下のようなメリット・デメリットが存在する。
メリット
- クレジットカード同様にお店で決済に使用できる
- ATMから現金の引き出しもOK
- プリペイドなので使い過ぎを回避できる
- 紛失・不正利用に遭っても損失が限定的
デメリット
- プリペイドであるため、旅の途中で足りなくなる可能性も
- サイト上で両替・チャージ操作をする必要がある
プリペイドカードの利便性は高いが、特にチャージ作業が面倒、でもクレジットカードも持ち歩きたくないなんて人には、国際キャッシュカードという選択肢がある。
国際キャッシュカードは、デビットカード機能が付いているケースが多く、お店で決済にそのまま使えるし、わざわざ両替所に行かなくとも現地のATMで現金(外貨)の引き出しもOKだ。
基本的に海外では、決済はクレジットカード済ませられることが多い。しかし、アメリカようにチップの手渡し等が文化としてある国では、ベルデスクでの荷物預かりやベッドメイク等、キャッシュが必要になるケースも少なくない。
そのため、クレジットカード同様に決済ができ、キャッシュも引き出せる存在としての国際キャッシュカードの有用性は実は結構高い。
また、国際キャッシュカードを作った銀行口座を海外旅行用として、必要な現金のみ入れておけば、不正使用されてもプリペイドカード同様に損失を限定することができる。
案外便利な国際キャッシュカードについて、メリット・デメリットや、手数料が安い銀行はどこか、海外での決済事情に悩みを持つ人のためにご紹介したい。
国際キャッシュカードのメリットとは?
改めて説明するが、国際キャッシュカードには、以下のようなメリットがある。
- いつものキャッシュカードですぐに外貨調達できる手軽さ
- 利用時に手数料が取られる形態だから、金利の支払い不要
- お店のレジでクレジットカード同様に決済に使用できる
- あくまでもキャシュカードなので、審査は不要
いつものキャッシュカードですぐに外貨調達できる手軽さ
色々な外貨調達手段があるなかで国際キャッシュカードを使う利点としては、いつものキャッシュカードで海外ATMからお金を引出せることだ。
最近のカードでは、VISAのマスターカードのATMネットワークであるPLUS、Master CardのCirrusのマークがあるATMなら大概はお金を引き出す事が可能。
仕組みは簡単で、国際キャッシュカードはどちらかのATMネットワークに加入しており、ATMで指定した金額分が加盟ネットワークの定める換算レートで円換算されて、キャッシュカードの口座より引き落とされる。
色んな銀行のホームページを見ていただくと、「VISAの定めた換算レートに○○%加算したレートで円貨換算」等と書いてある。この上乗せ分が銀行の為替手数料に相当する。
海外で利用できるキャッシュカードの形態としては、キャッシュカードに上記ネットワークが利用できる機能が付帯しているもの、もしくはデビットカード機能が付帯しているもの等がある。
案外知られていないが、デビットカードでも海外のATMで口座の残高の範囲内であれば、現地通貨でお金を引き出すことが可能だ。勿論、これはクレジットカードのキャッシングとは異ななり、あくまでも自分の預金からの引き落としだ。
利用時に手数料が取られる形態だから、金利の支払い不要
海外のATMで同じように現金が必要となった場合、クレジットカードの外貨キャッシング機能でも同じように現地通貨を調達することができる。
しかし、外貨キャッシングの場合は、あくまでもキャッシングであるため、金利が発生する。
例えばクレジットカードのキャッシングが年利18%の場合、20万円分借りると1日あたり約100円の金利負担だ。
クレジットカードのキャッシング機能は、手数料面で得するケースもあるが、締め日直後に引き出した場合、ATM等で返済しなければ、最悪2カ月分近い金利が取られる。
一方、国際キャッシュカードで自分の口座から引き出す場合は、金利もかからず返済作業もない。
「キャッシング」・「借入」等というような言葉を毛嫌いされる方や、手数料等よりも返済にハラハラしたくない方には、有用な手段の1つと言える。
お店のレジでクレジットカード同様に決済に使用できる
多くの国際キャッシュカードは、デビット機能付きのキャッシュカードだ。
デビット機能が付いていることから、預金残高の範囲内でそのまま海外のお店での決済に使用することができる。
デビットカードなので、クレジットカードとは異なり即座に預金残高に使用分が反映されるため、海外での利用管理が行いやすく、使いすぎの防止にも役立つ。
また、海外旅行に行く前に、国際キャッシュカードを利用する銀行口座の残高について、海外で使用する予定のキャッシュだけ残しておき、それ以外を自分のメインの口座に移しておけば、プリペイドカードのように使用することが可能だ。
海外ではクレジットカードをウェイターに預けて決済する場面も相応にある。クレジットカードの場合、スキミング等で不正使用されてしまうと、場合によっては自腹で不正利用分を支払わなければいけない可能性もある。
しかし、国際キャッシュカードでは、不正使用されても口座の残高までとなるため、クレジットカードよりも安心感がある。
あくまでもキャシュカードなので、審査は不要
また、国際キャッシュカードは当然ながらキャッシュカードであるため、自分の口座の残高までしか使用できないが、その分利用に伴う審査もない。
何らかの理由でクレジットカード発効の審査が通らず、海外旅行でいつも不便な思いをしている人でも、気軽に持っていける。
国際キャッシュカードのデメリット
- 予定にない出費がある場合は対応できない
- 相対的に手数料が割高になる場合もある
予定にない出費がある場合は対応できない
これは外貨プリペイドカード同様だが、国際キャッシュカードは預金残高の範囲内までしか使用できない。
不正使用されても損失が限定される一方で、海外想像以上に欲しいもの多く、沢山買い物をしてをしてしまっても、使用できるのは口座の残高までだ。
どうしても更に決済する必要が生じた場合のためにも、持ち歩く必要はないが、海外旅行ではクレジットカードは最低でも1枚は持って行った方がよい。
相対的に手数料が割高になる場合もある
一番のデメリットがこれだ。顕著な特徴として、手数料がクレジットカード等よりも相対的に割高になる傾向があることだ。
実際にどれぐらいの手数料が取られるのか、実在のカードを例に確認してみよう。
国際キャッシュカードで引き出し | クレジットカードの通常利用 | クレジットカードの外貨キャッシング | |
ATM利用手数料 | 100円(税別) | – | 1万円以下:100円(税別) 1万円超:200円(税別) |
為替レート | VISAの基準レート | VISAの基準レート | VISAの基準レート |
為替・事務手数料 | 4.0% | 1.63% | – |
金利 | – | – | 年利18% |
1000ドル利用時の金額 | 約104,000円 | 約101,630円 | 約101,480円 |
※1.国際キャッシュカードは新生銀行、クレジットカードは三井住友VISAカードをモデルケースとして使用。
※2.為替レートは100円、キャッシングの返済は30日とする。
※3.VISAのレートとはVISA World wideが定める取引用の為替レート。VISAのインフラを用いて異通貨間取引が行われる場合は、このレートをが持ちいられる。どのようなレートが用いられているのかは、VISAのホームページで確認可能。
国際キャッシュカードはそのまま海外で利用できる新生銀行のカード、クレジットカードはお馴染みの三井住友VISAカードで比較してみた。
表の「為替・事務手数料」に注目して欲しい。実は国際キャッシュカードには、ATMから引き出す際の為替手数料が4%とやたら高いのだ。
後ほど比較するが、大体どこの国際キャッシュカードでも多くは2~4%は要する。一方、クレジットカードを使用すると上記ほど高い為替手数料の支払は無く、国際キャッシュカードにかかる事務手数料よりも良心的。海外キャッシングに至っては、1週間で返せばかなり手数料水準は低くなる。
少しでも手数料を削減したいなら、手数料の高い銀行の利用は避けたい。この銀行の場合、その利便性に見合わないので、あまり使うことはお勧めできない。
国際キャッシュカードを利用するなら、手数料がクレジットカードと変わらない安い銀行を使うという「銀行選び」が非常に大事だ。
一番為替・事務手数料が安い銀行はどこなのか?
ここでは、国際キャッシュカードを発行している銀行の海外での利用手数料について一覧で確認し、最も国際キャッシュカードとして使用すべき銀行・避ける銀行を確認したい。
国際キャッシュカードとして使用できる銀行一覧(デビット兼用含む)
銀行名 | ジャパンネット銀行 | SMBC信託銀行 | 新生銀行 |
カード形式 | デビット機能付カード | 国際キャッシュカード | 国際キャッシュカード |
換算レート | VISA基準レート | SMBC信託店頭レート | VISA基準レート |
為替・事務手数料 | 3.02%(税込) | 3% | 4% |
ATM手数料 | 無料 | 無料 | 無料 |
年会費 | 無料 | 無料(別途口座維持手数料あり) | 無料 |
保険 | 盗難保険 | ー | ー |
備考等 | ・盗難保険 ・ファミマ提携カードあり |
・米ドル引出専用カードあり | – |
銀行名 | 三菱東京UFJ銀行 | 住信SBIネット銀行 | 楽天銀行 |
カード形態 | デビット機能付カード | デビット機能付カード | デビット機能付カード |
換算レート | VISA基準レート | VISA基準レート | VISA基準レート |
為替・事務手数料 | 3.0% | ・米ドル決済:1.5%(非課税) ・円貨決済:2.5%(非課税) |
3.024%(税込) |
ATM手数料 | 108円(税込) | 無料 | 無料 |
年会費 | 1,080円(税込) | 無料 | 1,029円(税込) |
保険 | ショッピング保険、不正利用補償 | 不正利用補償 | ー |
備考等 | ・デビット利用で0.2%還元 | ・デビット利用で0.3%還元 | -デビット利用で0.2%還元 |
銀行名 | イオン銀行 | ソニー銀行 | りそな銀行 |
カード形態 | デビット機能付カード | デビット機能付カード | デビット機能付カード |
換算レート | VISA基準レート | VISA基準レート | VISA基準レート |
為替・事務手数料 | 1.60% | 1.76%(税込) |
2.5% |
ATM手数料 | 216円(税込) | 216円(税込) | 無料 |
年会費 | 無料 | 無料 | 540円(税込) |
保険 | ショッピング保険、不正利用補償 | ショピング保険、不正利用補償 | ー |
備考等 | ・デビット利用で0.5%還元 ・イオン対象店舗でポイント2倍 ・イオン対象店舗で割引 |
・デビット利用で0.5-2.0%の還元 ・Hertz、Travelex優待利用 ・他行宛振込+1回無料 |
-デビット利用でりそなクラブポイント |
※カードブランドを選べる場合は、VISAを選択する前提
ざっとまとめるとこんな感じだ。だいたいどこのキャッシュカードも、純粋な国際キャッシュカードというよりもデビット機能が付帯されており、それが海外でも国際キャッシュカードとして使えるパターンが多い。
為替・事務手数料最安のオススメ銀行はイオン銀行のキャッシュ+デビット
手数料が最も安いのが、このイオン銀行のキャッシュ+デビットだ。
利点①:手数料が国際キャッシュカード最安、年会費も不要
このカードの利点は、海外のATM等で引き落とした時の為替・事務手数料が1.60%と、国際キャッシュカードやデビットカードの中では最も手数料が安い。
1.60%という水準は、クレジットカードを海外で利用した際にかかる事務手数料1.63%とほぼ同じ。
つまり、海外旅行中に金利負担のあるクレジットカードでキャッシングするのが嫌なら、ほぼ同じ手数料のイオン銀行カードでATMから引き出せば、余計な手数料負担はなく現金を入手できる。
年会費もないため、とりあえず持っておいて損はない。
利点②:海外旅行中の商品の破損や不正利用の補償付きでポイントも溜まる
加えて、このイオン銀行のキャッシュ+デビットはカード盗難時の不正利用補償(不正利用分全額)を備えており、海外で利用する際の最低限の安全性も備えている。
また、海外では移動が多いため、購入した商品が破損する可能性もある。そうした場合に、一定額まで補償してくれるショッピング保険が付帯されている。
つまり、貴方がもし海外で現金で決済を中心に利用しているなら、ほとんど現金決済と変わらないイオン銀行のキャッシュ+デビットで支払った方が断然良い。
加えて、200円の利用でときめきポイントも1ポイント溜まるため、利用金額の0.5%が還元される。
VISAデビットが良いなら、ソニー銀行のSony Bank Walletも検討の余地あり
その他には、ソニー銀行のSony Bank Walletなども為替コストは1.76%と同等の水準を保持している。
イオン銀行のキャッシュ+デビットの付帯ブランドはJCBデビットになるが、Sony Bank WalletはVISAデビットだ。この点が大きく違う。
海外での利用の場合、基本的にJCBデビットは、VISAが使用できるお店やATMなら問題なく使用できるが、何となくVISAが良い人はSony Bank Walletを国際キャッシュカードとして使用したい。
勿論ショッピング保険・不正利用補償等、基本的なものは付帯してあるので、海外利用にも安心して持って行くことが可能だ。
Sony Bank Walletはポイント還元が0.5%あることに加え、Hertzレンタカーの利用料が20%割引になる特典もある。海外でHertzを使う人は、持っておいても良いだろう。
割高になるのは新生銀行、ジャパンネット銀行、楽天銀行等
上記とは逆に、国際キャッシュカードとしてコストの観点から使ってはいけないカードが新生銀行、ジャパンネット銀行、楽天銀行、三菱東京UFJ銀行のキャッシュカードだ。理由は明白で、為替・事務手数料がバカ高い。
新生銀行は冒頭の例の通り、為替コストが4%かかる。また、ジャパンネット銀行、楽天銀行、三菱東京UFJ銀行などのカードも3%前後とかなり割高。
ここらへんのカードを海外で利用するのは控えた方が良い。メインバンクに上記の口座を利用している場合でも、国際キャッシュカードとしては不利だ。
そのため、素直にクレジットカードでのキャッシングか、別の銀行口座の開設、もしくは手数料が最も安いマネパカード等の外貨プリペイトカードを利用しよう。
キャッシングの場合は、帰国後は返済手続きを忘れずに。
海外旅行における私の国際キャシュカード活用方法
以上の情報を基に、家族と海外旅行に行く際の私の国際キャッシュカードの使い方を紹介する。
1.イオン銀行キャッシュ+デビットを持参。口座には必要なお金だけ入れる
最も手数料効率が良いのは、イオン銀行のキャッシュ+デビットだ。
改めて紹介すると、これを1枚持参すればわざわざ両替所に並ぶ必要もなく、現地のATMから直ぐに外貨キャッシュを調達できる。換算レートも為替コスト込みでも、空港の外貨デスクより安い。
また、買い物や不正利用の補償も付くから、海外での利用も安心だ。このカードのイオン銀行口座には、旅行中に使う20万円くらいを入金しておき、万が一の時のためにそれ以外のお金は一切入れない。
実質的に外貨プリペイドカードと同等に使用でき、チャージ作業等も必要ないから楽だ。
2.利用前にATM引出限度額の確認・設定を行う
長期滞在の場合は、1日に使用する金額はそう多くないはず。
万が一の場合に備えて、不必要な額を引き出せないよう限度額を変更しておく。例えばイオン銀行の場合は、50万円まで初期設定は引き出し可能なので、10万円程度に下げておこう。
各行のATM利用限度額初期設定
- ジャパンネット銀行:30万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- SMBC信託銀行:10万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- 新生銀行:0円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- 三菱東京UFJ銀行:50万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- 住信SBIネット銀行:30万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- 楽天銀行:20万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- イオン銀行:50万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- ソニー銀行:50万円/1日(限度額の設定変更方法はこちら)
- りそな銀行:50万円/1日
3.緊急用のデスクの番号を控える
海外のATMはカードを飲み込んでしまったり、スキミング用にスキャン装置が取り付けつけられていたりと、たちの悪いものが多い。すぐに利用停止措置や再発行の依頼が取れるよう緊急デスクの番号は必ず控えておこう。
- ジャパンネット銀行:事故受付センター +81 3-6739-5026
- SMBC信託銀行:紛失・盗難専用ダイヤル +81 45-330-2890
- 新生銀行:新生パワーコール 北米から +1 866-744-6734 その他の国から +81 3-5954-7763
- 三菱東京UFJ銀行:デビットデスク +81 50-3786-7350
- 住信SBIネット銀行:+81 3-5363-7370
- 楽天銀行:カスタマーセンター +81 3-6832-2277
- イオン銀行:紛失・盗難専用ダイヤル +81 3-6832-1234
- ソニー銀行:カスタマーセンター +81 3 6730 2730
- りそな銀行:クイックロビー運営センター +81 48-826-0311
※全て海外から電話をかける場合
とりあえずはこんなところだろうか。これさえ押さえておけば普通に海外にキャシュを持っていくよりも、何倍も便利に国際キャッシュカードを利用できる。
ぜひお試しあれ。