20年、30年と長年サラリーマンをやってきて退職が見え始める頃に考え出す将来の生活。日本は住むのに便利だけど、老後は海外でゆっくりしたい!と誰もが一度は思うのではないでしょうか。また、最近では経済のグローバル化に伴い、子育ては海外で行い、国際的な人間に育てたいという富裕層も多いようです。
海外移住には抽選や海外法人での雇用など様々な方法がありますが、お金という条件を満たせば最も移住確実性が高いのは投資永住権かもしれません。そこで、実際投資移民として海外に移住するためには、具体的にいくら準備すれば可能なのか主要な国々について調べてみました。
Contents
投資永住権とは?
移民制度の目的は国の発展のため
まず、投資永住権について言及する前に、移民制度について確認しましょう。ある国からある国に合法的に移民する(永住権を獲得する)には以下のような手段がメジャーですね。
- 難民申請
- 現地人との婚姻
- 政治亡命
- 各国の移民制度を利用して募集枠に応募
1は日本は平和な国ですから日本国籍では申請不可能ですし、2・3は移民目的では滅多にできるものではありません。普通の人が努力して永住権を取得するならば、4の手段を利用することになります。
そもそも、なぜ各国移民制度を設けるのかというと、労働力問題の解消や優秀な人材や投資の呼び込みが主な目的です。国の発展には、豊富な人口、若く優秀な労働者、建設プロジェクトや起業に必要な資金など多くの物が必要になります。
本当は得体の知れない外国人を呼び込むよりも、みんな自国民だけでやりたいのです。
しかし、発展途上の国では教育水準も低く、資金も乏しい。一方の先進国は、国が発展すると優秀な人材の絶対量が不足するほか、少子高齢化で若年層が少なくなり、国の年金福祉制度等を成り立たせるには若い人の数も足りなくなってきます。
こうした問題を解決するために、多くの国では移民制度を設けて永住を許可し、優秀な人材や資本を外部から調達しているんですね。
この状況は、まさに日本も同じです。但し、島国かつ単一民族国家で外国人の移住にはセンシティブ。国の経済や制度維持のためには必要なのは分かっているけど、治安の悪化など副作用も怖い。
今の日本が抱えるジレンマですね。
投資永住権とは国内の投資スポンサー募集枠
永住権の中でも投資永住権・投資移民とは一体なんなのでしょうか?投資永住権とは、端的に言うと「お金を移民先の国に何らかの方法で投資し、移民先の経済や雇用に寄与することができる外国人を募集する枠」です。
国の経済を発展させるためには、外資系企業を誘致するという手があります。また、お金を持っている人に来てもらい国内で起業や何らかのプロジェクトや企業に投資してもらう方法もあります。後者を目的にしたものが、投資永住権です。
投資永住権に関連した主要な条件は、概ね以下のようなものが多いです。
- 犯罪歴が無く、永住権取得後にも社会保障を必要としない(ex.継続的な収入がある)
- 移民先の金融機関に一定金額以上の預金する
- 移民先で起業し、現地人を何人か雇用する
- 移民先でインフラや工場の建設などに一定金額投資する
- 移民先で一定金額以上の公社債に投資する
等ですね。ご覧になれば分かるように、取りあえずお金さえ有れば特殊な能力を有していなくても承認が下りる可能性が高いので、富裕な人で老後の海外移住を夢見る人は各国のこの条件を目指すことになります。
先進国の投資永住権
ここからは気になる各国の投資永住権の条件を見ていきましょう。まずは人気の先進国!読んでみると分かりますが、一般人には条件がキツイ。それでも諦められない人は何とかしてLet’s蓄財!
アメリカ
やはり移民と言えばまず頭に浮かぶのはアメリカじゃありません?憧れのグリーンカード。あれ?違いますかそうですか。ハワイ良いですよねぇ・・・。
米国の投資永住権は従来からの移民要件に加え、時限ですが緩和措置としてEB-5永住権というプログラムが実施されています。アメリカの投資永住権の条件は比較的まだ優しく、以下のような要件となっています。
◆永住権プログラムの主要条件
- 政府指定の地域センターの投資案件に100万米ドル(約1億2千万円)以上投資して、米国人を10人以上雇用する
- 特定地域の政府指定の地域センターの投資案件に50万米ドル(約6千万円)以上投資して、米国人を10人以上雇用する
これらのどちらかでOK。この永住権プログラムは学歴や語学条件も問われず、家族も一斉に永住権登録が可能です。投資資金は融資によるお金でも問題ないので、6千万円程なら実現可能性は低くありません。また、”投資”ですので採算の取れる投資案件であれば、お金も返ってきます。
さすが多民族国家USAですな。唯一残念なのは50万ドルの条件は時限措置であり、いつか切れる可能性があること。恒久的に続けて欲しいですね。
シンガポール
近年急速に発展するシンガポールもまさに移民国家。海外から有能な外国人や富裕層を呼び込み、著しい経済成長を成しました。赤道近くで年中蒸し暑いですが、寒い場所が嫌いな方にはうってつけ。
しかし、このシンガポールの投資永住権はかなりの曲者。資産家プログラムがあるのですが、保有金額条件は約15億円以上と莫大なことに加え、現在は募集が停止されています。代替的な起業家向け投資永住権も金額要件が高く、応募者資格が厳しい。
◆永住権プログラムの主要条件(起業家・経営者プログラム)
- 250万SGD(約2億円)以上の新規事業投資もしくは既存事業拡大への投資
- 250万SGD(約2億円)以上のベンチャーキャピタルへの投資
上記1.2のいずれか。加えて、以下の申請者要件を満たすこと。
- 規定分野での起業家経験
- 3年以上の経営実績
- 未公開企業の場合、30%以上の自社株保有
- 業種にもよるが、最低でも年間40億円以上の売上
投資金額の条件はまだしも、申請者の資格はこんな条件満たすやつそんなおるんかいな。というくらい難しいシンガポールの投資永住権。アメリカの移住要件がいかに優しいか分かりますね。シンガポールに住みたい人は別の手段を取るしかありません。
オーストラリア
南半球の資源国オーストラリア。以前は地理的な近さもあり、日本との貿易量も非常に大きかったですが、今は着実に経済力をつけてきている中国との関係の方が深くなってきています。オーストラリア資源の一番の上顧客も中国です。
そうした経済的な関わりから最近中国系移民が急増しているオーストラリアですが、国家戦略として移民を受け入れているため、移民制度の申請方法は様々にあります。その中でも投資家ビザによる永住権取得は、以下のようなものが条件となっています。
◆永住権プログラムの主要条件
まず、4年間の暫定ビザを取得します。投資家ビザ(s188 )は以下のような条件をクリアすると取得できます。
- 事業もしくは投資活動経験(3年、不動産投資や配当収入など)
- 直近5会計年度において、10%以上の出資による事業経営もしくは150万豪ドル(約1億2千万円)以上の投資経験
- 直近2会計年度において、225万豪ドル(約1億8千万)以上の純資産
- ビザ認可後に150万豪ドル(約1億2千万円)以上の投資(州債購入)を実施
- ポイントテストで一定(65点)以上かつ55歳未満
上記資格取得後に永住権投資家ビザ(s888)に申請します。
- 暫定ビザ(s188)を保有
- 直近2年以内に1年以上オーストラリアに居住
- 判定時に4年以上継続の投資(州債の保有)
等です。これは一般的な投資家向けプログラムですが、少し金額を積める場合は特別投資家ビザ(Significant Investor s188 )といい、500万豪ドル(約4億円)以上の投資(州債購入など)を4年継続すれば永住権に切り替えることができるプログラムもあります。こちらは発給実績の大半が中国人だそう。さすが人口多いだけあって金持ちの絶対数も多いですね。
4億円の方は厳しいですが、通常投資家プログラムであれば約1億2千万円で移住できる可能性があるので、実現不可能な額ではありません。また、そもそもとしてオーストラリアは移民用プログラムが充実しているため、投資家プログラムではなく、技術系ビザ等でも移民しやすいのもポイント。
英語圏で子育てには良好な環境、温暖な気候で過ごしやすい。治安も良く移住先としても人気が高いので、将来の移住候補としては必ず選択肢には入ってくるのではないでしょうか。
カナダ
暑い所は嫌だけど、治安がよく便利な先進国で、自然に溢れる環境が良い!という欲張りな方はカナダがオススメでしょう。カナダの強みも広大な大地から得られる資源で、資源消費国の中国との関わりは濃いこともあり、中国人富裕層に人気の国でした。
しかし、このカナダ残念なことに2014年2月に一度投資永住権の制度を廃止しています。
カナダ「投資家移民」廃止 中国富裕層に衝撃
カナダ政府が今月、多額の投資をカナダに行うのと引き替えに永住権を与える移民制度の廃止を決めた。カナダへの移住を申請していた中国や香港の富裕層ら4万6000人以上に直接の影響が出るとみられ、中国では「中国系排斥の動きだ」と反発の声が出るなど、大騒ぎになっている。
主に中国系移民が多用していたこの制度ですが、結局中国人は中国人で集まり、地元の経済にあまり寄与しないことから廃止に至ったそうです(今現在までカナダの投資永住権は凍結されたまま)。確かに中国系の移民はどこの国でも中国人街を作り、集まっているイメージがありますね。
但し、この投資永住権が期間限定で復活される可能性があるとのことで、移住要件は以下のものになります。
◆投資永住権プログラム主要条件
- 160万カナダドル(約1億3千万円)の資産
- 80万カナダドル(約6千5百万円)の無利子預金による投資か22万カナダドル(約1千8百万円)の支払
- 2年以上の経営者・マネジメント歴
- ケベック州への定住意思
不動産投資などを行っている人からすると、これらの要件はそこまで難しくないでしょう。上記の国々に比較すると、かなりイージーと言えます。
私は寒い所が非常に苦手なので、カナダへの移住にピンとくるものはありませんが、こちらも英語圏で教育費が高校まで無料と福祉水準も高く、治安も良好で子育てには向いています。また、多民族国家で外国人にも寛容です。デメリットとして先行する移住者がよく挙げているのは、気候と食べ物。寒冷な地域に強い方にはありかもしれません。
ニュージーランド
オーストラリアの隣国ニュージーランド。牧草地が多く畜産が強いこの国も、移民は積極的に受け入れている方です。その背景には、人口より羊の方が多い国と言われているように国の人口がそもそも少ないことや、近年激しい人口流出が続いていることにあります。
ニュージーランドのすぐそばには、オセアニアの巨大大陸オーストラリアがあり、言語も英語で支障なし。近代的な金融・ITや資源関連ビジネスなどの就職機会はオーストラリアの方が圧倒的で、ニュージーランドは頭脳の流出に悩まされています。
そんなニュージーランドの移住要件は以下通り。
◆投資永住権プログラム主要条件
Investor Plusの場合
- 1000万NZD(約7億5千万円)以上の投資(公社債、企業)を3年間
- 2年目以降年間44日以上の滞在
Investorの場合
- 150万NZD(約1億1千万円)以上の投資(公社債、企業)を4年間
- 100万NZD(約7千5百万円)以上の資産
- 3年間の事業経験
- IELTS3.0以上
- 2年目以降年146日以上ニュージーランドに滞在
冒頭の説明では積極的と申し上げましたが、金額だけ見ればそこまでですね。本気度が足りません。後者などは年300人の発給制限もあり、投資家はそこまで必要とされていないようです。
ニュージーランドは現地の仕事さえ見つけることができれば、技術者(高度人材)要件の方が遥かに入りやすいです。
新興国の投資永住権
ここまで読んできて分かるかと思いますが、先進国への移住は金額的にかなり大きいものが要求されます。「私には無縁の話だな・・・」って諦めてしまってはいませんか?そんなあなたには新興国の移住が良いかもしれません。先進国と比べると金額的な難易度は段違いに低いです!
懸念としては経済成長のスピードが早く環境が変化しやすいことや政治的にも未熟なことから、移住の条件が変更されやすいのには注意が必要ですね。
マレーシア
近年発展著しいマレーシアは、日本人の移住者も急激に増えています。新興国と侮る事なかれ。マレーシアは首都クアラルンプールの他、シンガポールと国境を接するジョホールバルなどは猛烈な勢いで都市化が進んでおり、近代的な生活は十分に行うことができます。
今現在は永住権の取得はできませんが、最長10年間のロングステイビザは取れるため、子育て目的での期間限定移住は大いにありでしょう。
◆ロングステイプログラム(MM2H)の主要条件
50歳以上の場合
- 月1万MYR(約30万円)以上の収入
- 35万MYR(約1000万円)以上の資産
- 15万MYR(約400万円)の現地金融機関での定期預金
50歳未満の場合
- 月1万MYR(約30万円)以上の収入
- 50万MYR(約1400万円)以上の資産
- 30万MYR(約800万円)の現地金融機関での定期預金
各々上記に加えて、マレーシアの医療保険に加入等の条件を満たす必要がありますが、基本はこんなところですね。先進国と比較してやはり金額面での条件の低さは一般ピープルには魅力的です。
近年退職者だけではなく、ミドル層がマレーシアを選択的に移住するケースが増えていますが、マレー語・中国語・英語話者が多いマレーシアの環境はグローバル経済に通用する人材を安価に育てるのには最適だそう。少し頑張れば達成できる金額なので、是非ともチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
フィリピン
一時は低成長でアジアの病人とまで言われ蔑まれたフィリピンも、近年では人口も一億人を突破。流暢な英語力を備える豊富な労働力が外国に評価され始め、フィリピンの経済は高い成長率を維持しています。英語が通じることや、物価が安く生活費が低いことから住みやすいですが、まだまだ治安は先進国などと比較すると安定していない点は注意。
気になる投資系の永住権は以下の通り。
◆永住権プログラムの主要条件
SRRV(特別居住退職者ビザ)
クラスや年齢ごとに以下の預託金(定期預金)に加え、年会費360米ドル(約5万円)が必要。預託金はビザのキャンセルとともに返金。
Classic-預託金を投資に転用可能
- 50歳以上:2万米ドル(約240万円)
- 50歳未満:5万米ドル(約500万円)
- 50歳以上の年金受給者:1万米ドル(約120万円)
Smile-投資に転用不可
- 35歳以上:2万米ドル(約240万円)
Human touch-投資に転用不可で療養者が対象
- 35歳以上:1万米ドル(約120万円)かつ月額1500米ドル(約18万円)以上の年金受給があり、健康保険加入
SIRV(特別投資家ビザ)
- 7万5千米ドル(約900百万円)以上の株式投資を継続
等です。基本的にはSRRVなのでしょうが、永住するタイミングが不況で株式相場の底であれば、SIRVで投資をしつつ永住権を獲得なんてこともありかと。ご覧のように金額的な条件で見れば上記の国々の中では最も安いですね。
フィリピンだとパラワン島やセブ島等のリゾート地で憧れの南国ライフが楽しめるのではないでしょうか。
まとめ
新興国は注目のマレーシアとフィリピンを取り挙げましたが、先進国よりかなり移住難易度は低いです。いずれも暑い国なのでほぼ年中半袖で過ごせるため、寒冷な地域の多い先進国より寧ろ好む人もいるかもしれませんね。
これらの新興国は先進国と比較すると、治安や教育水準ではやや劣るかもしれませんが、近い将来さらに高い水準になることが予想されます。そうなる頃には日本は更に人口が減少し、もっと生活が厳しくなっている可能性も。
老後生活やグローバルな子育ての一環としての投資永住。是非検討されてみては?