毎年2月が近づくと、FXで投資を行っている人には気をつけなければいけない時期がやってきますね。そう確定申告です。サラリーマンをやっていると、「副業的にやっているだけで大して儲かっていないし、まぁいいか」と思っている人も中にはいるかもしれませんが、要注意です。
よく勘違いされやすいですが、例えば「サラリーマンなどの給与所得者の給与以外の収入が20万円以内の場合確定申告が不要。だから確定申告はする必要がない」という話。これは実はあまり正しくありません。そういう考え方をしている人は、単純に年間の「為替差益 ー 為替差損」が20万円未満だからOKと思っている場合が多いです。しかし、正しくは
1年間の為替差益 ー 為替差損 ± 確定スワップ ー 収入を実現するための必要経費 > =20万円
の場合に確定申告が必要になります。つまり、必要経費の概念が含まれておらず、書籍の購入やセミナーの参加費用で実質的には負け越している可能性もあるわけですね。
20万未満だからと言って、確定申告をしないのはせっかくの節税・損失繰り越し控除をみすみす逃すことになります。また、海外のFX会社を使っている人は、少し課税の区分が異なるのでその点にも注意です。
確定申告前にFXに関連する税制をしっかり確認し、より正確に計算された金額で納税処理を行いましょう。
Contents
FX取引を行った人は、だいたい確定申告を行うべき人?
給与所得者で確定申告が必要な人の定義
改めて所得税における給与所得者の確定申告について、国税庁のHPで該当箇所を確認してみます。
[平成27年4月1日現在法令等]大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
まさに2番の部分が該当箇所になります。年間給与収入が2000万円未満かつ給与以外の収入で20万円以上となる場合は、確定申告が法的に必要になります。但し、この20万円の収入とは何かを正しく理解しなければなりません。
20万円未満の場合は、確定申告をしてしまうと逆に20%の課税でお金が減るではないかと思われますが、必要経費もろもろを正確に計算すると案外利益なんて出ていないこともあり、確定申告することで来年の節税に繋がる可能性が高いです。
このような点を考慮すると、実は殆どの人が確定申告をすべきかもしれません。
FXから生じる利益の計算
まず、単純にFXから生じる利益は、ポジション決済時の差益から差損を差し引き、ポジションを保有している間についた確定済みのスワップポイントを反映した金額を計算することから始まります。
会社ごとに異なるスワップの扱い
この計算において、確定済みスワップポイントには注意です。国内のFX会社の場合、スワップポイントの計上方法によって、ポジション保有中でも課税対象になる場合とならない場合があるからです。
FX会社によっては、未決済ポジションでもスワップポイント分は確定益として口座残高に計上していることもあるため、利用しているFX会社がどのように処理しているか逐一確認しましょう。
合理的に説明できるものは全て必要経費になりうる
次に必要経費を算出金額から差し引きます。上記の計算だけでは、収益を得るのに何の情報やツールも利用しなかったことになりますが、実際はそうでは無い可能性が高いです。FXで利益を挙げるのには、以下のような物が必要になっていることが多いですね。
- 相場やFXに関する書籍・新聞購読費
- FXのセミナー受講費
- セミナー会場までの交通費
- (海外FXなどに多い)入金・出金手数料
- 自動売買に要したEA(エキスパートアドバイザー)購入費用
- 取引に要したインジケーターの購入費
- 売買の参考にする売買シグナル受信費用
- FX仲間との情報交換に要した飲食費
- 売買に要するPCやモニター、スマフォ購入費用
- プロバイダなどの通信費
収益を上げるために必要な経費と説明できる可能性のあるものを列挙しました。これらを必要経費として計上すれば、実際は損になっている可能性もあり、こういった人は確定申告をした方が節税メリットが大きい。(正当な経費であれば、必要経費によってマイナスとなった申告も問題ないです。)
そのため、確定申告用に今後これらに支払をした時は領収書などをきちっと残しておきましょう。
但し、注意したいのが計上に合理性があり、明確に説明できること、そして決して嘘をつかないこと。上位にあるものは比較的必要経費として認められやすいでしょうが、下位の経費は少し説明が難しい。
EAやインジケーターの購入費やFXに関する書籍は、FX取引に要した費用としての妥当性は問題ないでしょう。しかし、PCの購入代金や通信費は「FX以外の使用」と「FX取引での使用」に合理的に按分するのは困難です。
全く算入できないということではないですが、合理性に疑いのないように説明できる計算や証明をきちんとできるようにしておくか、税務署員に事前に確認する方が安全かもしれません。
国内のFXと海外のFXは扱いが異なる点に注意する
次に国内のFX会社と海外のFX会社で取引した場合に適用される課税関係の違いを確認してみましょう。
国内のFX会社での取引
国内のFX会社で行われるFX(外国為替証拠金取引)は先物取引にかかる雑所得等として、20%(所得税15%・地方税5%)の申告分離課税が課されます。申告分離とは、他の所得とは全く別に計算して、確定申告によって納税する方法を指します。(詳しくは国税庁の外国為替証拠金取引の課税関係を参照)
この外国為替証拠金取引の申告分離課税には、以下のような特徴があります。
- 他の先物取引にかかる雑所得等の金額と損益通算が可能
- 生じた差損は今後3年に渡って「先物取引にかかる雑所得等」の金額から繰越し控除する事が可能
損益通算は同じデリバティブ系取引と
「先物取引にかかる雑所得等」の対象には以下のような取引があり、これらの取引で損が出た場合はFXの利益と相殺し、利益幅を小さくすることができるのです(※但し、株式現物や投資信託は対象外であることに注意。)。
- 先物取引
- 外国為替証拠金取引
- 株式・外為オプション取引
- CFD
年を跨いだ繰越し控除もOK
そして、損益通算しても相殺しきれなかった損失は、3年間に渡って繰越し控除する事が可能です。確定申告のメリットはこれが大きい。現在の損失が将来の節税額に繋がるからです。仮に今年30万円負けていても、来年は100万円勝つ可能性があります。そうした場合、来年の収入から30万円を差し引き、課税対象の収入を小さくすることが可能なのです。
国内のFX関連の収入で扱いの不明瞭な収入として、ポイントサイト経由などによる口座開設のキャッシュバックがありますが、これは一時所得に該当します。一時所得では以下の3番目を指しますが、一時所得内の特別控除額50万円で概ね消化されるため、申告する機会は少ないでしょう。
[平成27年4月1日現在法令等]一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(3) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
(4) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
海外のFX会社での取引
海外のFX会社を利用して取引した場合の課税処理は国内と少し異なります。まず、海外のFX会社の場合、国税庁HPの記載内容によると、「金商法規定のデリバティブ取引」に該当しない場合は、雑所得として総合課税の対象となると書かれています。
(2) 差金決済による差損が生じた場合
(省略)
(注)1 平成23年12月31日以前に行われた店頭取引の場合の課税関係は次のとおりです。
イ 差金決済による差益が生じた場合
一般的には、雑所得として総合課税の対象となりますので、課税総所得金額に応じた税率(超過累進税率)で課税されます。ロ 差金決済による差損が生じた場合
上記イのとおり、一般的には雑所得とされることから、雑所得の範囲内での損益の通算は可能ですが、他の各種所得の金額との損益通算はできません。
なお、取引所取引に係る「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算もできません。(注)2 平成24年1月1日以後に行う店頭取引であっても、金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引に該当しない取引は、申告分離課税ではなく、注1の取扱いとなります。
(出所)https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1521.htm
海外のFX会社の場合は、日本における営業許可の取得や報告義務を果たしていないため、上記申告分離課税の枠内に入りません。雑所得の場合は、以下のような処理になります。
- 雑所得内での損益通算は可能ですが、他の所得との通算は不可
- 損失の繰越し控除は不可
損益通算は雑所得同士で
雑所得に該当する場合は、雑所得内での損益通算しかできない点に注意です。つまり、国内のFX会社や先物取引で損失、海外のFX会社やバイナリーオプションで利益が出ている場合でも、一切の相殺ができません。
ちなみに、雑所得には以下のような物があります。サラリーマンのような給与所得者でも、このような物から収入を得ている場合は、海外FXとの損益通算で所得の圧縮が図れるんですね。
- アフィリエイト収入
- 生活用動産以外のネットオークション売買による収入(例、せどり、30万円以上の貴金属・骨董品)
- 印税・原稿料・講演料
- 公的年金
- 営業用ではない貸金の利子収入
損失の繰り越し控除はできません
一方、海外のFX会社を利用する最大のデメリットは、損失の繰り越し控除ができない点。例え今年損が大量に出ていたとしても、来年利益が出れば今年の損は関係なく、毎年ごとの収入・損失のみで確定申告しなければいけません。
海外のFX会社の口座開設では、IB(Intoroducing Broker)システムの下キャッシュバックサイトを利用すれば、口座開設者は取引にかかったスプレッドの一部をキャッシュバックとして受け取ることができます。
こちらのキャッシュバックも基本的には一時所得扱いですので、50万円分の特別控除額以内までは所得として計上する必要はありませんが、国内FX等の口座開設キャンペーンで累計キャッシュバック額が50万円を超過した場合は必ず申告しましょう。
ちなみに、1点だけ注意したいのが海外FXによるIBキャッシュバックの継続性の観点。一時所得の第三項では、法人から受ける金品のうち継続性があるものを除くと記載されています。取引ごとに支払われるキャッシュバックは継続性がないとは言えないため、税務署の担当者の解釈によっては雑所得に区分される可能があることも頭の隅に入れておいた方が良いですね。
最後に、自分がIBとしてブログやサイトを通じて他の顧客を勧誘したことによるIBコミッションは雑所得になりますので、これはアフィリエイト収入として申告しましょう。
ちなみに、細かい確定申告の仕方はこちらの記事を参照。
まとめ
特に必要経費は会計ソフト等で計算を楽にしておく
以上が確定申告前に最低限確認しておきたいFXにかかる税制です。国内のFX会社を利用する人は、先物取引やオプション取引を行うと税制面での相性が良いです。一方、アフィリエイトやせどりで収入を得ている人は、海外のFX会社を利用すると損益の通算が可能になります。これを利用して、よくある話ですが両建てをしてごにょごにょすると・・・。
いずれにせよ大事なのは、上記の仕組みを正しく理解し正しい確定申告を心がけることですね。過度な経費計上、租税回避行為は避けましょう。
ちなみに、FX取引を行うにあたり、日々EAやインジケーター、関連書籍を購入する人はfreeeなどの会計ソフトを導入しておくと、確定申告時に以下のように収支を計算したり、必要経費を算出するのが楽になります。
私の場合は、1年の間に購入した書籍やEAなどの領収書は、全てスキャナで取り込んでfreeeで処理しています。FX取引において必要経費は節税の重要な要です。しっかり記帳しておきましょう。