会社に長く務め、いわゆるミドルと言われる年次となると、経験やスキルも相応に蓄積されるため、処理できる仕事のスピードや幅が広がります。向上心が高く、自己成長に貪欲な人ほど、もっと難しい仕事や新たなスキルの身につく仕事をやってみたいと考えるでしょう。
しかし、日本の大企業ほど、こうした責任ある仕事や裁量は年次に依存し、例え実力があったとしても、中々責任のあるポジションや仕事を振ってもらえません。
私自身も相応の仕事能力を身に付け、かなりスピード感を以って仕事の処理ができるようになりましたが、三十台も半ばに差し掛かり、日々任せてもらえる仕事について、物足りなさを感じ悩むようになりました。
- この仕事を続けても、自身の成長にあまり繋がらないのではないか?
- 上司や先輩よりこの分野の仕事なら自分ならもっと早く捌けるのになぜアサインされないのか?
私と同様にこうした悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくないでしょう。私は自己分析や客観評価の聞き取りを通じ、こうした悩みを徐々に解消しました。その際に指摘されたポイントや、責任ある仕事を任せられるようになった工夫を書いてみます。
大事な仕事を任せられない人に見られる傾向
①仕事の実績について、上司との認識にギャップがある
複数の部下を持つマネジャーは、驚くほど部下のことが見えていません。部下は同じ担当や自分の仕事のみを考えれば良いのですが、マネジャーは複数の部下を持つ事が多いので、一人当たりにかけられる時間は限定されています。
私自身ある期間にかなりのアウトプットや貢献をしたと考え、定例面談でマネジャーに報告すると、報告するまでそんな事実があったことを忘れていた、ということはよくありました。こうした事象は、成果の見えにくい事務仕事にありがちです。
営業のような仕事は、例えば契約何件、売上いくらといった形で定量的にパフォーマンスを示すことができるため、マネジャーと部下に認識のギャップは生じにくいです。
しかし、特に事務仕事の場合は、後に残るような成果以外は、忘れがちです。また、マネジャーがそもそもそうした業務をしていたことを認識していなかったなんて場合も少なくありませんでした。
このような人の場合、そもそも自分が思うほどマネジャーは評価しておらず、結果として責任ある仕事を振られる可能性は低くなります。
②自分から任せて欲しい仕事を取りに行っていない
私は、大企業で出世している役職者は、それなりに皆マネジメント能力があるものだと思っていましたが、これは大間違いです。伝統ある日本の会社ほど、職責と年次は比例するため、管理能力ゼロのマネジャーが沢山います。
与えられる仕事を頑張っていれば、自然と上司からレベルの高い仕事を振られるものだと理解している人も少なくないですが、上述した通り、部下の業務管理に人材育成の観点がゼロのマネジャーはごまんといます。
こうしたマネジャーの下では、受動的に仕事を任せられることを待っていては、自分にとって少しレベルの高い仕事は中々回ってきません。
現状の組織が回っていれば問題ない、将来的に人員が欠けたら、困難が生じたらその時に考える、このようなマネジャーの下で働いているなら、自分からレベルの高い仕事を任せてもらえるよう提案する必要があります。
③年次、学歴など、上司が任せるのに不安な要素がある
レベルの高い仕事は、当然の処理にかかる難易度は高いです。高度な知識を必要としたり、上位者と交渉することも少なくありません。
このような仕事に対処するには、多くの経験と知識を必要とします。あまり部下をよく見ていないマネジャーほど、こうした力量を経験年数や学歴等のバックグラウンドから判断します。
勿論これらの要素が長く、高い人ほど、ポテンシャルも高く、うまくいく可能性があります。一方で、こうしたバイアスのために、本当は力量があるにも関わらず簡単な仕事だけに押しとどめられてくすぶっている人を数多く見てきました。
- 本当は実力があるのに、いつまでも同じ仕事をしている
- 若いけど、どの上位者よりも対応力が高い
- 学歴は普通だけど、仕事の処理能力はピカイチ
どこの職場にもこうした人はいます。ただし、経験年数や年次、学歴は今の自分の努力で改善できるものではありません。周囲と比べてこのような点にハンデを持つ人は、別のアプローチで攻める必要があります。
④上司・先輩をないがしろにする、小馬鹿にする
度量のある理想的なマネジャーは、生意気な部下でも実力があり、部下の成長が将来の会社の発展のために寄与すると考えれば、ドンドンレベルの高い仕事を振ったり、相応のポジションに登用します。
しかし、これもまた現実ですが、私が見てきた限りそういう人はほとんどいません。仕事ができるエリートな人でも、性格に難がある人は腐るほどいますし、自己中な人が沢山います。
こうしたマネジャーは、自分の成果を上げるため、仕事が抜群にできるけど生意気な人間より、そこそこでも自分が頼みやすい人間に仕事を振ります。
特に上位の役職者になるほど、大体の人は最低限仕事をこなす能力は身についているため、難度の高い仕事を振られる、上位のポジションを任される人は、上司に対していかに忠実な態度を表すことができるか、などの要素で判断されます。
私は本当にくだらないと考えていますが、これが現実です。
⑤自分でなんでもやってしまい、周囲を巻き込めていない
実力のある人は、大抵何でも自分でこなすことができるため、周囲に仕事を任せることができない人が少なくないです。
処理能力が高いため、自分がやった方が圧倒的に高い成果となり、対処スピードも早いです。小規模な仕事については、上司は安心して仕事を任せることができるでしょう。
一方で、大規模で多くの所管を巻き込んで対処する仕事の場合、パフォーマンスが高く自分で何でもこなす部下だと、周囲を巻き込んでチーム単位で仕事を回すことができるのか不安を感じます。
また、自分で何でも抱え込んでしまうことから、こうした人は常に忙しそうに見えるため、大きな仕事を振っても良いのか判別がつかず、結果として時間の空いている他の部下に仕事が回ってしまうパターンも少なくありません。
難度の高い仕事を任せてもらえるようになる解決法
これまでの指摘は直接的ではないものの、いつまでも物足りない仕事でモヤモヤしてきた私が受けた指摘です。こうした指摘をクリアした対処法を書いていきます。
解決法①つまらない仕事でもスピード感を以って対処し、仕事を振りやすくする
基本的に仕事の難度は役職者の能力に応じて振られるものですが、時につまらない仕事を振られることも少なくありません。難易度の高い仕事を得るには、実はこうしたつまらない仕事に、真摯に対応するか見られています。
最近は上司も「こいつ忙しいのにこんな難しい仕事を振っても問題ないか?」と、気を遣う人が増えています。仕事を選り好みせず、どんなにつまらない仕事でもきちんとこなしていると、
- コイツは仕事を断らないという頼みやすさ
- どんな仕事でも問題ないという信頼感
マネジャーにこれらの感覚を醸成することができます。こうした”土壌”を築くことができれば、遠回りのように見えて案外レベルの高い仕事に早くたどり着けます。
どんなにしょうもない仕事でも、「余裕です。任せてください。」の一言でさっさと片づけていくことを習慣づけましょう。
解決法②他人を信用し、周囲の力を借りてチーム単位で仕事を回す
難度の高い仕事ほど、他人の力を借りる必要があります。しかし、自分で何でもできてしまう人は、特に他の人の力を借りて進めることに長けていないことがよくあります。
少しでも自分を振り返ってみて、周囲にあまり任せられるような人がいないと考えている人は、まさにその典型です。
本当に仕事ができる人がいないんだと思う人もいるかもしれませんが、これは難度の高い仕事を貴方に振ってくれないマネジャーと同じ思考回路です。
どんなに能力が低くても、貴方はその与えられた環境で最大限にパフォーマンスを高める必要があります。能力が低い人にあった仕事、その人の能力よりも少し難度が高いを適宜見極め、お願いして仕事を回していくことを意識しましょう。
自分も仕事を回しつつ、自分以外の人ができる仕事は、”人を管理して回す”。
こうしたサイクルをうまく回すことができれば、貴方が難度の高い仕事を進めていく能力があると考え、マネジャーもより規模の大きな仕事を貴方にお願いしてくるようになります。
解決法③業務の進捗・成果をまめに報告し、正しい評価を仰ぐ
重要な仕事ほど、上司もその進捗は気になるものです。しかし、何でも自分で判断し、抱え込んでしまう部下の場合、自分が聞くまで業務進捗の報告がなく、仕事をこいつに任せても良いか判断に迷うことになります。
・必要があれば、メールのCCに必ず上司を挟んでおく
・全く聞く必要がなくても、上司に相談の体裁で意見を確認する
自分の能力水準から見て、全く上司の力を借りる必要がなくても、このような進捗報告や相談をこまめにしてもおくことで、上司としての自信と安心感を持たせます。
・業務成果に対する周囲のフィードバックを報告する
・アウトプットや成果はこまめにまとめておき、面談などのタイミングできちんと提示する
更に、自分が対応してきた仕事は、周囲や顧客からの反応という形で上司に連携しておきます。あくまで他人からの評判・評価という形にして、自分の仕事の成果を上司に正しく認識してもらうと良いでしょう。
面談などの際に、主だった仕事の成果をリスティングし、目に見える形にしておくと更に、印象付けることが可能です。
媚びる必要はありません。ただし、こうしたことの繰り返しが、こいつに仕事を任せても問題ないという評価を早期に得る近道になります。
解決法④レバルの高い仕事を自分で企画し、相談する
受動的に仕事を回す傾向があるマネジャーの場合、進んで部下の育成をしようという気概がないため、難度の高い仕事が降ってくる可能性は少ないです。
客観的にみて上の人間がこういうタイプの人間だった場合、頑張ったらいつか任せてくれるようになる、という考えは極力捨てましょう。時間の無駄です。
受動的なタイプのマネジャーなら、自ら進んで難易度の高い仕事を得られるよう提案していった方が早いでしょう。交渉は取引先や他所管のみならず、上司に対しても積極的に行うべきです。
私がよくやっているのが、いわゆるドア・イン・ザ・フェイスの交渉術です。最初に難易度の非常に高い仕事や会社のルール上、若手ではできない仕事を任せるように提案します。
断られたら、本当にやりたい仕事をお願いすると良いです。最初の提案を断った分、本当にやりたい仕事をアサインしてもらえる可能性が高まります。
注意点としては、こうした手法はマネジャーからある程度の評価を既に得ていることが前提ですので、前述した対処法と併用して行っていくことです。
ここまでやってダメなら、人生もったいない。環境を変えよう。
まともな職場なら、これまで言及した対処を行うことで、難度の高い仕事がドンドン降ってくるようになります。私も他所管からの協力要請が増え、普段の業務においてもより責任ある仕事を任せてもらえるようになりました。
他方、例えばマネジャーがあなたのことを嫌っている等の能力と関係ない要因や、会社の規則上年次が経過していないと絶対的にできない場合もあります。
こうした環境では成長スピードは恐ろしく緩やかとなります。貴方が上記のような対処を行った上で、現状に対して未だ歯がゆいと感じているのであれば、素直に環境を変えると良いでしょう。
自分の時間や成長余地を無駄にしては勿体ないです。