現時点で最も低コストで米国株式にインデックス投資できる方法・銘柄とは何だろうか?

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投資の神様であるウォーレン・バフェットは、妻への遺言に自分の死後は現金の10%を政府短期債に、残りをS&P500のインデックスファンドで運用するよう指示しているのは有名な話だ。

これは、ウォーレン・バフェットが中長期ではインデックスファンドでの運用の方が、他の高い手数料を取るアクティブファンドよりも高いパフォーマンスを出せることを信じているからだ。

こうした話に示されているように、個別株の運用を細かく見ていられない人は、こういった形で米国株式のインデックスファンドでの運用を行えば安定的に資産を増やしていくことができる。多くの投資ブロガーやFP等も同様に案内しており、最近はインデックス運用は益々増えつつある。

こうしたインデックスでの運用では、投資におけるパフォーマンスの成否は投資先ファンドの再現性と運用にかかるコストに依存することになる。前者の端的な指標がトラッキングエラーであり、後者では売買手数料及び信託報酬が挙げられる。

インデックス投資で最もコストが低い投資手段とは?

トラッキングエラーは、実際のファンド運用におけるキャッシュの保有や、売買コスト等により生じることが多い。インデックスが右肩上がりに推移している局面では、こうした要素はパフォーマンスの下押し要因になる。

ただし、リターンの差分が上振れていても、下振れていてもトラッキングエラーは拡大するため、パフォーマンスの優劣と完全には結びつかない。最適化法によるぶれが生じた可能性もあるし、逆に下落が長引くとキャッシュ保有が多い方がマイナスリターンを抑制する効果もある。

※これはあくまでも極端な例で、ここまでガバガバな運用をしている所はそこまでないだろうが。

一方、ファンド売買に伴って証券会社に支払う取引コストや、信託報酬は確実にパフォーマンスを押し下げる。そのため、トラッキングエラーが桁違いに大きすぎないことが前提であるが、私は投資手段選択の選択基準として運用コストを最も重視している。

そこで気になるのが、米国株式でインデックス運用を行うにあたり、もっともコスト的に有利な手段はいったいどの手法なのかということだ。気になったので調べることにした。なお、今回調べたのが以下の投資スキーム。

  1. 国内投資信託
  2. 国内上場ETF
  3. 米国上場ETF
  4. 先物
  5. 株価指数CFD

海外の保険、投資信託でもインデックス投資できるものが存在するが、一般的な個人投資家では口座開設などが困難なため、上記5つの選択肢から探してみた。

なお、米国株式のインデックス投資には、主たるものとしてはダウ平均・S&P500の2つの指数があるが、ここでは米国株式の平均的なリターンを享受できる指数を混在で比較する。そのため、比較には上記2指数以外も含んでいる。

ちなみに、S&P500を参照するインデックスファンドは多いが、長期で見た場合の比較では優良銘柄が厳選されているダウ平均の方がアウトパフォームしている点には留意したい。

ダウ平均と比較すると、S&P500は良くも悪くも分散されており、より平均的なパフォーマンスしか得られていない。

青:ダウ平均    赤:S&P500

国内投資信託

国内の投資信託のうち、上記の指数に追随するファンドは多数存在する。

こういったファンドの選択は、純資産額が多いファンド(=保有者の多い)の中から選ばれる傾向がある。ただし、近年は手数料の引き下げが激化する中、手数料を引き下げたファンドの新設が相次いでおり、低コスト上位は運用期間が短く純資産額が小さいものが多い。

投信形式で米国株式のインデックス運用を行うメリットとしては、積立・再投資が自動的に行われる点だろう。ETFの場合、積立による追加購入や、分配金の再投資は自ら行う必要があるが、投資信託ではそれがない。

一方、手数料はETFと比べると確実に高い。同一のパフォーマンスを生み出すETFが存在する中、上記の利点と追加的なコストが見合っているかはやや疑問だが、徹底的に投資の手間を省きたい人は投資信託で投資すると良い。

ちなみに、投資信託の運用では、参照指数は比較的資金の集まるメジャーな指数しか無い。これも人によっては致命的なデメリットの1つだろう。

■運用コストの低い国内の投資信託抜粋

 順位 ファンド名 取引手数料(買付手数料) 信託報酬
1 楽天・全米株式インデックス・ファンド なし 0.1696%程度
2 One たわらノーロード NYダウ なし 0.243%
3 大和 iFree NYダウ・インデックス なし 0.243%
4 大和 iFree S&P500インデックス なし 0.243%
5 SSGA 米国株式インデックス・ファンド なし 0.486%
6 野村インデックスファンド・米国株式配当貴族 なし 0.54%以内
7 野村インデックスファンド・米国株式配当貴族(為替ヘッジ型) なし 0.54%以内
8 SMTダウ・ジョーンズインデックス・オープン なし 0.54%以内

※SBI証券で購入した場合

国内で米国株式に投資できる投資信託のうち、現時点で手数料が低いものから順に並べている。手数料は概ね0.50-60%を目安とした。

インデックスファンドは手数料競争が激化しており、見直し・新設が相次いでいる。低コストのファンド上位のうち、運用期間が3年を超過しているものは、8位にあるSMTダウ・ジョーンズインデックス・オープンしかない。

1位にある楽天・全米株式インデックス・ファンドは、米国株式投資ではメジャーなETFの1つVangard Total Stock Market ETFを投信に組み入れて運用しているものであり、ETFのfeeが0.04%で投信の信託報酬が0.1296%という内訳である。

なお、上記の各ファンドが対象とする指数は以下の通り。

  • S&P500:大和 iFree S&P500インデックス、SSGA 米国株式インデックス・ファンド
  • ダウ平均:One たわらノーロードNYダウ、大和 iFreeNYダウ・インデックス、SMTダウ・ジョーンズインデックス・オープン
  • CRSP US  トータルマーケットインデックス:楽天 全米株式インデックス・ファンド
  • S&P500 配当貴族指数:野村インデックスファンド・米国株式配当貴族
  • S&P500 配当貴族指数(為替ヘッジあり):野村インデックスファンド・米国株式配当貴族(為替ヘッジ型)

パフォーマンスや銘柄分散、配当利回り等重視する項目に応じて各々のファンドを使い分けると良いだろう。

特にこだわりが無ければ、大和のiFreeでいくのがシンプルな判断と考える。純資産もそれなりに増えていることに加え、同社は手数料の引き下げも積極的なので、長期で持っていても競合に合わせて引き下げることが期待される。

国内上場ETF

ETFで投資するメリットは、その運用コストの低さだろう。ETFは受益証券のやり取りで資金の入出金が頻繁に生じないこと、また販社が介在しないことから、投資にかかる費用は低いと言われている。

ただし、最近はノーロード型の投資信託が次々と設定されてきており、近年の投資信託の手数料は古くに設定されたETFよりかなり低い。

ETF投資のデメリットとしては、投資信託の項目でも触れたが、分配金の再投資や積立の購入は自己で行わなければいけない点だ。手間はかかるが、見方によっては場中など自分の好きなタイミングで売買できるという点はメリットにもなりうる。

ちなみに、ETFには売買手数料が生じるが、NISA口座の活用や小額ずつの購入で最近は取引手数料がかからなくなっているため、ここでは一旦取引手数料はかからないものとして比較する。

■運用コストの低い国内上場ETFの抜粋

 順位 ETF名称 銘柄コード 信託報酬
1 SPDR S&P500 ETF 1557 0.0945%
2 iシェアーズ S&P500米国株式 ETF 1655 0.15%以内
3 上場インデックスファンド米国株式 1547 0.16%

国内上場のETFは、以上の3つが敢えて投資するなら選ぶ銘柄で、全てS&P500に追随を目指すETFだ。ダウ平均に追随するETFも別にあるが、古いETFで信託報酬がべらぼうに高く、それを買うなら投信の方がマシということで取り上げていない。

これら以外にも東証には複数の米国株式指数を対象としたETFが存在するが、流動性が極端に低いことや上場廃止が予定されていること等の理由から、現状だとまともに投資できるのはこれだけしかない。

ただし、それも米国上場のETFと比較すると出来高は非常に小さい。日によっては出来高が極端に薄れることもあるため、自分の売りたい時に妥当な価格で捌けるかどうか、ETFの価格が純資産時価から大幅に乖離が生じないか怪しいと思っている。

個人的には米国上場のETFを直接保有した方が、流動性のことで悩む必要もなく安心できる。

米国上場ETF

米株投資の本命の1つは、米国市場に上場するETFを購入することだ。SBI証券や楽天証券、マネックス証券から購入できる。

米国上場のETFのメリットは、圧倒的に低い経費率だろう。米国に遅れて日本でも経費率の引き下げ競争が激しくなってきているが、米国では何年も前からそういった状況にあり、運用コストは更に低い

また、参照する指数が豊富で流動性も潤沢にある。セクター別や配当重視等、自分の好きな指数で自由にインデックス投資ができる点は最高だ。デメリットは売買の手間と手数料だろうか。国内上場ETF同様に再投資や積立購入は自分で行う必要がある。

また、海外上場のETFは、NISA口座等で購入すれば買付コストがかからないが、普通に取引すると為替を含めて案外かかる。売買コストを低く抑えるためには自分で資金をドル転して投資する必要があるが、これも手間と言えば手間かもしれない。

 証券会社 下限手数料 上限手数料 為替手数料
SBI証券 5ドル 20ドル 25銭
住信SBIネット銀行:4銭
SBI FXα :0.5銭
楽天証券 5ドル 20ドル 25銭
マネックス証券 5ドル 20ドル 25銭

現状SBI証券・楽天証券・マネックス証券はいずれも一律同じ手数料水準となっている。証券の売買コストのみならどこでもよいが、為替のドル転コストを考えるとSBI証券を選ぶのが賢明だ。

住信SBIネット銀行で外貨預金を買い、SBI証券に外貨入出金サービスで移動すればスプレッドは4銭で済む。また、1万通貨(100万円前後)からではあるが、SBI FXαで差金決済ではなく現引きで米ドルを確保すれば、スプレッドは0.5銭とさらに為替コストは低下する。

次に実際に投資するETFを見てみよう。

■運用コストの低い米国上場ETFの抜粋

 順位 ETF名称 銘柄コード 信託報酬
1 i Shares Core  S&P500 ETF  IVV 0.04%
1 Vangard  S&P500 ETF VOO 0.04%
1 Vangard Total  Stock Market ETF VTI 0.04%
4 Vangard Growth ETF  VUG 0.06%
4 Vangard Value ETF VUV 0.06%
4 Vangard  Large Cap ETF VV 0.06%
4 Vangard Mid-Cap Index ETF VO 0.06%
4 Vangard Small Cap ETF  VB 0.06%

運用コストの低い低い米国上場のETFは、概ねバンガードが上位を占めている。調べれば分かるが、現状米国上場のETFのうち、さらに低いコストのETFはiShares Core S&P Total U.S. Stock Market ETF(ITOT:0.03%)、SPDR Portfolio Total Stock Market ETF(SPTM:0.03%)等が存在する。

しかし、国内の大手証券では取り扱っておらず、投資には米国のネット証券の口座を開く必要等があるため、現状気軽に投資できる低コストETFは0.04%~のバンガード系となる。

バンガードはサイズ別のインデックスのETFは0.06%となっているが、ここから更にセクター別や配当重視インデックスに投資するETFに投資したい場合は、0.07%~0.08%で別途上場されているETFを選べば良いだろう。

海外先物

インデックス投資というと、投資信託やETFなどの現物投資が引き合いに出されることが殆どだ。しかし、こうした現物に投資した場合と同じ経済効果は、先物でも得ることができる。

先物の場合、配当や分配金を得ることはできないが、金利を差し引いた応分の利益は先物価格のディスカウントで反映されている。

先物に投資するメリットとは、低い運用コストと高い資金効率にある。前述までの投資信託は、証券会社に支払う運用委託費用が一定程度発生するが、先物にはそれが存在せず、売買手数料のみで済む。また、円建先物の場合は為替リスクを取らないので、値動きがより安定する。

■ダウ平均先物及びS&P先物の主な取り扱い証券会社

 銘柄 上場市場・建通貨 証券会社 片道手数料(税抜)
ダウ平均 東証・日本円 松井証券 300円
SBI証券 900円
マネックス証券 940円
E-mini S&P500  CME・米ドル 楽天証券 4.86ドル
E-mini ダウ平均 CME・米ドル 楽天証券 4.86ドル

国内上場では、ダウ平均を対象とした先物が上場されており、松井証券では1枚300円から取引できる。国内のダウ平均先物の取引単位は指数×100なので、1枚あたり220万円前後のETFを保有するのと概ね同じ経済効果となる。

220万円分の現物を一度に保有しようとすると、海外のETFでは上限手数料の20ドルに加え、現物価格の220万円相当の米ドルが必要になる。しかし、現在は5万円もあれば先物を一枚保有することができるので、資金を効率よく投資することが可能だ。

一方で、先物の保有にもコストがあり、長期保有することによってロールオーバーに伴う取引コストが継続的に発生する。SQ前には期近を売って期先を買建てるため、往復の売買コストが年4回発生し続ける

保有に伴うコストの金額規模をざっくりと1ドル100円換算で、22,000ドル分購入する前提で1年保有した場合を計算してみると以下の通り。なお、先物は安定的に運用するため、おおよそ想定元本金額の4分の1の5,500ドルを証拠金として差し入れる前提とする。

 費用項目 現物(海外ETF:IVV) 先物(E-mini先物)
購入時コスト(売買手数料+為替) 2,880円 1,862円
信託報酬 880円
ロールオーバーコスト 3,898円
合計 3,760円 5,670円

※現物はSBI証券(為替は住信SBIネット銀行)、先物は楽天証券を前提。1ドル=100円換算でダウ平均が22,000ドルで横這いで推移した局面を想定。

為替取得に伴うコストがSBIネット銀行経由のドル転で他の証券会社よりも安いことや、先物はロールオーバーコストが重いことが主因となり、先物投資が劣位となる形で差が生じている。

先物によるインデックス投資は、短期でやる場合は有利に機能する場合もあるが、中長期で投資するなら素直に現物でやる方が運用コストは低くなる。

株価指数CFD

株式CFD(contract for difference:差金決済取引)はFXの株式版という認識で差支えない。株式や株価指数そのものを対象に差金決済取引を行なうため、FX同様にレバレッジをかけて取引を行うことができる。

また、先物とは異なり、限月がないためロールオーバーコストが発生しないことも魅力の1つ。

株式CFDにはFX同様に店頭取引と取引所取引があり、店頭取引であればGMOクリック証券で、取引所取引ならSBI証券かマネックス証券が銘柄数や手数料の観点からお勧め。

株式CFDのメリットは、以下のような特徴があるが、特に取引コストの面では現物や先物でインデックス投資するよりもメリットが多い。実際にかかる売買手数料としては、無料で取引できるETF等を除けば最も安い

■店頭・取引所株式CFDの特徴

 項目 店頭取引(GMO) 取引所取引(SBI)
取引コスト(スプレッド) 60円 153円
対象資産 ダウ平均先物、S&P500先物 ダウ平均指数
レバレッジ(取引単位) × 10 × 100
維持コスト(金利) 0 現在は0
配当 なし あり
為替リスク あり なし

※スプレッド・手数料は記事執筆時の証券会社提示レート

店頭取引の利点は、ダウ平均やS&P500等の選択肢が豊富にあり、取引単位も小さいので小口で投資できる点。また、配当は貰えないがCFDの維持コストである金利調整も発生しないため、キャピタルリターン狙いで長期で持つには良い。

一方、取引所取引が秀でている点は、配当調整があるためロングポジションなら配当相当額の再投資が可能なことだ。また、円建で為替リスクがないため、中長期で円高を見ているなら取引所取引の方が為替で目減りしない。

CFDの最大メリットはその低い維持コストだ。店頭取引は上述の通りそもそも金利調整が発生しないが、現在の低金利環境下では、取引所取引も金利調整の受払がなく、保有コストは0だ。

今後短期金利が上昇すれば維持コストが必要になってくるが、潜在成長・インフレが低位に留まる現環境下では当面気にする必要はない。また、仮に上昇しても配当受取金額で十分に相殺できる金額と思われる。

結論:コスト重視のインデックス投資なら株式CFDが高効率

これまでに挙げた各々の特徴及びコストについて、ダウ平均・もしくはS&P500のインデックス投資を220万円分一括で投資する場合の試算で比較してみた。

■各手法による運用コストの比較

 手法 買付コスト 維持コスト 1年目の累計コスト
投信(大和iFree) なし 5,346円 5,346円
国内ETF(SPDR) 921円 2,079円 3,000円
海外ETF(VOO) 2,881円 880円 3,761円
先物(円ダウ平均) 300円 1,800円 2,100円
株価指数CFD(くりっくダウ) 153円 0 153円

※先物は松井証券、それ以外はSBI証券で最も有利なコース、取引手法で行った場合。為替は住信SBI経由。

投資する指数にこだわりがなければ、投資コストの観点では、取引所取引であるくりっく365の株価指数CFDが圧倒的に低コストだ。現状の取引環境では、金利調整が発生せずポジション維持コストが無い。

なお、最もコストがかかるのが投資信託。やはり、信託報酬が年0.20%台は圧倒的に代替手段と比べ割高と言える。

次に投資スキームごとの特徴を比較したものが以下の表だ。

■各手法による特性の比較

 手法 自動積立・再投資 レバレッジ 分配金・配当金 為替リスク
投信(大和iFree) 可能 不可 あり あり
国内ETF(SPDR) 不可 不可 あり あり
海外ETF(VOO) 不可 不可 あり あり
先物(円ダウ平均) 不可 可能 なし なし
株価指数CFD(くりっくダウ) 不可 可能 あり なし

※ここでは信用取引は考慮していない。

特性の比較においても、株価指数CFDの優位性は高い。レバレッジをかけられる取引は、低レバレッジでリスク管理をしっかり行えば、資金効率を高めつつ、破綻リスクも回避できる。

また、配当の受取が可能な手法であれば中長期では複利効果が期待できるため、中長期投資なら配当ありの手法を選びたい。為替リスクの無さも円高による目減りを避けられるため、あると尚よい。

これらを踏まえると、コスト重視派の米株インデックス投資家は、現在の金融環境では株価指数CFDが最も高効率の投資ができると思われる。ただし、唯一投資の手間の観点なら、投信に分がある。

一旦設定したら、多少コストが懸かっても殆ど投資のことは考えたく無い人なら選んでみても良いだろう。

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